1. 『インド 厄介な経済大国』(著:エドワード・ルース、訳:田口未和、出版:日経BP社) [歴史]

インドについての非情に素晴らしい入門書です。著者は、インド人を妻に持ち、英フィナンシャル・タイムズの元南アジア支局長として5年間ニューデリーに滞在しました。

インドの恥部が次々と紹介されます。例えば、レイプをされたある女性は警察に駆け込んだところ、別室に連れて行かれ、警官に再びレイプされてしまった(警察が相当腐敗しているそうです)、とか、人を殺した暗い過去を持つと噂される多くの政治家が重要なポストに就いている、とか、法律で禁止されているにもかかわらず児童労働が野放し状態である、とか、ほとんどの村では、女児は生まれても、ありがたがられず(母となった女性は「おまえは石を生んだね」と冷たい視線を投げられるので)、胎児が女とわかったとたんに中絶をしてしまう、など、枚挙にいとまがありません。

しかし、この本には、そういった告発だけでなく、著者のインドに対する愛や、将来への希望も同時に感じられます。上記の問題の解決を願いつつ、インドがよりよい国になるためのたくさんの提言をしています。そのどれもが説教くさくなっていないのは、彼が上から目線ではなく、インド人と同じ目線で語っているからだと感じました。

本書はまた、昔の英米人のインド観も紹介しています。チャーチルはインドについて、こう言ったそうです。

「野蛮な宗教をもつ野蛮な国」

「赤道と同じで、国と呼べるほどのものではない」

ニクソンは、

「インドに必要なのは大量飢餓だ」

と言ったそうです。そして、キッシンジャーは、インド人のことを「いかれた連中」と呼び、インディラ・ガンディーを「メス豚」呼ばわりしたそうです。

それが理由かどうかはわかりませんが、アメリカが、イラクには大量破壊兵器が存在する、と大騒ぎして、多くの国を巻き込んでイラクを侵略したとき、

「インドはこの戦いになんら利害関係をもたない」(当時のヴァジパイ政権のブラジェシュ・ミシュラ上級顧問の発言)

として、侵攻を非難し、協力を拒んでいます。恥部も多いが、骨もあるなぁ、と思いました。

タグ:読書日記
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町田のママ(の代理)

ポニオンさんブログ解説おめでとう。
でも難しくて理解できません。
by 町田のママ(の代理) (2009-06-21 16:57) 

ぽにおん

町田のママ(の代理)様

ご訪問、ありがとうございます。

最近、背伸びした本ばかり読んでいます。だいたい、テーマが「IT」、「経済」、「医学」・・・なんて、私には無謀ですよね!(笑)

でもね、難しいことにチャレンジすると、頭の体操になって、脳みそが拡張されるし、心のタフな人間になれるんですって!(『メンタル・タフネス』という本にそう書いてありました。)

あと、ITにしても、経済にしても、医学にしても、しっかり勉強すれば、自分の生活に役立つものばかりだと思うのです。例えば、「栄養学」は医学の一部。どんなものをどれくらい食べたらいいのかを知ることは、現代人としてとても役立つと思っています。

ときには軽い小説やユーモアの本、漫画なんかも読んでいこうと思いますので、末永く、おつきあいいただけたら幸いです。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
by ぽにおん (2009-06-22 08:28) 

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